【葬送のフリーレン】ユーベル=不死なるベーゼ 説【考察】

【葬送のフリーレン】ユーベル=不死なるベーゼ 説【考察】

なんだこの説は……たまげたなあ。

【考察①】二人の名前の由来

『ベーゼ(böse)』と『ユーベル(übel)』は、どちらもドイツ語で『邪悪』を意味する言葉です。
このことから、何かつながりがないか探り始めました。

邪悪(じゃあく)のドイツ語

ベーゼ
böse


ユーベル
Übel

https://naming-dic.com/word/de/67288705

なお、フランス語の『Baiser:口づけ』もベーゼと読むようですが、
英語版の表記を確認したところ、不死なるベーゼは『邪悪』を意味する『böse』の名前で登場していました。

 

【考察②】不死なるベーゼの二つ名

不死なるベーゼは七崩賢の一人ですが、物語の開始時点で既にヒンメルたちによって討伐されています。

しかし二つ名が『不死なる』なのです。
強力な結界魔法が使えることが不死(ダメージが通らないという意味)の二つ名を与えたとも考えられますが、「不死」の二つ名を冠しながら「死んだ」とされているキャラクターは、メタ的に見れば生きていると思えてきます。
このことから、まだ生きている線を追ってみようと思いました。

 

【考察③】両者が扱う魔法は『矛』と『盾』!?

『不死なるベーゼ』が扱うのは、人類には壊せないと言われていた結界魔法でした。
結局フリーレンに破壊されましたが、恐らく、それまでの間は誰にも破壊されないでいたのだと思います。

一方、『ユーベル』が扱うのは、『大体なんでも切る魔法<レイルザイデン>』です。

この両者の魔法は、対極にある魔法と捉えることもできます。
大体なんでも切る魔法と人類には壊せない結界魔法。
『矛盾』の故事に登場する矛と盾を暗示させるかのようで、因果を感じます。

また、実は既刊13巻の中でユーベルが防御魔法を使うシーンは一度もありません。
対・魔法使いの戦いにおいて、ユーベルは以下の戦闘スタイルを取っています。
・魔法を回避する
・ソルガニールで拘束する
・敵の懐に飛び込んで「攻撃は最大の防御」的な戦い方をする

「防御魔法を展開して攻撃を防ぐこと」は一度もしていないのです。
なぜユーベルは防御魔法を使わないのでしょうか。
たまたま戦闘スタイルがそうだというだけなのか、何か使えない「理由」があったのか。

使えない理由があったとして、それが何なのかを追ってみましょう。

一級魔法使い選抜試験の第一次試験で起きた、『カンネ&ラヴィーネ vs リヒター』の戦闘を覚えていますでしょうか。
この戦闘の中で、リヒターが防御魔法についてこのように語っています。
「防御魔法はオーバースペックだと発動が遅れる」

これをユーベルの戦闘スタイルに当てはめるなら、このような仮説が見えてこないでしょうか。

ユーベルは不死なるベーゼと同様の強力な結界魔法を使えるが
それとトレードオフで、小出しにできる防御魔法が使えない……。
(レベルが上がってホイミがベホマに上書きされてしまい使えない……ちょっとだけ回復できればいいのにMPがたくさん必要……みたいな不便が起きている?)

それゆえ、強力なれど発動に時間がかかる結界魔法には
極力頼らないような戦い方を選ばざるを得ない……。

 

もしラントのように分身を作れるようになれば、防御魔法に頼らない戦術の幅が、ソルガニールを得た今以上に広がります。
これはユーベルがラントに共感することで分身魔法を会得しようとしていることの動機にもつながると思います。

 

【考察④】なんか魔族っぽい

言動が魔族っぽい。
これはたまたまではなく、意図的にそう描かれているのだと思います。(ユーベルが不死なるベーゼかどうかは別として)

人を殺して何とも思ってない様子が見てとれたり、マハトやソリテールのように人間の行動や思考に興味を持つシーンがあったりします。
もっとも、これは興味を持ち共感できれば魔法を会得できるのでそうしているだけかもしれませんが。

第一次試験の際、早々にシュティレを捕獲し、「試験終了まで潜伏してやり過ごそう」と提案したラントに対して、ユーベルはこう答えました。

「えー、つまんないよ。魔法使いなら堂々と戦わないと」

これは作中で何度も描かれている魔族によくある考え方そのものと言えます。
フランメとフリーレンの前に複数人で現れ、フランメに消し飛ばされた「クソみたいな驕りと油断で死んだ魔族たち」や、
魔力を制御するフェルンとフリーレンを「魔法使いの風上にもおけない」と評したリュグナーも、同様の思想を持っていました。

 

【仮説】ユーベルは不死なるベーゼなのではないか ~肉体を移ろう不死の魔法~

ここからは仮説です。
荒唐無稽な話です。

少女はあるとき不死なるベーゼに攫われ、それ以来、囚われていました。
彼女を不死なるベーゼが攫った理由は、自身の肉体が滅びたとき、受肉先があれば復活できる魔法を掛けており(不死なるの二つ名の通り)、そのための肉体が必要だったからでした。

不死なるベーゼの結界魔法は強力ですが、
断頭台のアウラの『服従させる魔法<アゼリューゼ>』や、
黄金郷のマハトの『万物を黄金に変える魔法<ディーアゴルゼ>』のような特別な名前がついていません。

つまり、ヒンメル一行を閉じ込めた強力な結界魔法ではなく、
この〝肉体を移ろう不死の魔法<仮>〟こそが不死なるベーゼが生涯をかけて研鑽した魔法だったのです。

 

ヒンメル一行に敗れたベーゼの肉体は滅びました。そして、予定通り少女の肉体を使い復活を果たします。
人間の身体を得た今、七崩賢たる魔族の名前『ベーゼ』を名乗るわけにはいかないので、『ユーベル(同じく〝邪悪〟の意味を持つ)』を名乗り、人間としての人生を歩むことにしたのでした。

ユーベルは人間を殺すことを何とも思っていないフシがあり、山賊を殺したり、試験官の一級魔法使いブルグを殺したあと平然とした様子を見せたりしています。
これは彼女が元魔族であるなら納得できる行動です。

一方で、殺しに猶予が欲しいと語ったヴィアベルには共感を示し、『見た者を拘束する魔法<ソルガニール>』を会得しました。
ユーベルが人間として生きていくにあたり、人間の心や考え方を理解したいという思いが芽生えたことでヴィアベルに共感しようと試みた結果、
同じく人間に興味を持つも最後まで人間に共感することが出来なかったマハトやソリテールと異なり、真に共感することができたのかもしれません。

また、ユーベルの扱う『大体なんでも切る魔法<レイルザイデン>』についてですが、
切れるイメージを持てるものは切れ、切れるイメージを持てないものは切れないという感覚的な魔法になっています。

しかし、なんと、この魔法では防御魔法が切れないのです。

防御魔法を切れるイメージを持てない理由……。
自らがベーゼだったころ、鉄壁の防御に自信があった結界魔法……。
彼女は防御魔法に対して自らの鉄壁の結界をイメージしてしまうからこそ、それが切れるというイメージが持てないのかもしれません。
もしそうだとしたら、なんとも皮肉な弱点といえますね。

 

Q.E.D. アウラ、自害しろ

 

【気になるポイント①】原作7巻のコマについて

原作マンガ『葬送のフリーレン 7巻』より、左からP32の上部コマとP34上部コマを抜粋

P32の上部コマ P34の上部コマ

(C) 原作: 山田鐘人・アベツカサ/ 小学館

どちらもヴィアベルの回想シーンです。
左のユーベルが描かれたページから1ページめくった同じ場所に、右の不死なるベーゼが描かれています。(少しずれてるけど)
ペラペラめくると同じ場所にいるユーベルとベーゼが交互に表示されます。
これは偶然なのでしょうか、または示唆なのでしょうか……!?

 

【気になるポイント②】ユーベル初登場シーン直前のフリーレンの会話

原作4巻のP174にて、フリーレンが過去に負けた戦いの話をしています。
4人の魔族、1人のエルフ、そして6人の人間に負けたと語っています。

ユーベルの初登場シーンが、そのコマの直後なのです。

フリーレンが6人の人間に負けたことを語った直後にユーベルが初登場

(C) 原作: 山田鐘人・アベツカサ/ 小学館

フリーレンが過去の敗戦を語った直後にユーベルの登場シーンを描いたのには何か意図があるのではないかと、これまでの仮説をこじつけてきた身としては思ってしまいます。

そしてここで一つ考えられるのが、以下のような経緯があった可能性です。

【不死なるベーゼ→ユーベル】の受肉は直接行われたのではなく
不死なるベーゼとユーベルの間に何人かの存在(人間・エルフ?)を挟み、
その肉体が死を迎えるたびに、新たな肉体へと移行し続けた……。
そして紆余曲折あり、今現在はユーベルになっている。
つまり、
【不死なるベーゼ→◯◯→△△(フリーレンと戦い勝利)→ユーベル】
のような感じで。

現在のユーベルの前身がフリーレンを負かした人物のうちの1人であることから、伏線としてユーベル初登場タイミングを意図的にフリーレンが敗戦を語った直後のコマにしたのではないかと考えました。

このパターンであれば、不死なるベーゼの死から少なく見積もっても30年以上経過しているのにユーベルの見た目が若いことの説明もつくかと思います。

 

【気になるポイント③】ゼーリエとの会話

もしユーベル=不死なるベーゼなら、ゼーリエがユーベルを一級魔法使いとして合格とした理由が気になります。
ゼーリエの直感によって、元魔族でも合格させてみようと思うなにかがあったのでしょうか。

さらに、合格を言い渡す際の会話も意味深に見えてきます。

ユーベルの姿を一目見ただけで合格を言い渡したゼーリエに対し、ユーベルは
「まだ何も話していないけど」
と言います。

これに対しゼーリエは
「会話が必要なのか?」
と返します。

このシーン、もし仮説が合っているのなら、
「(魔族であるお前との間に)会話が必要なのか?」
という皮肉を込めた意味で言ったようにも捉えることができるのではないでしょうか。
魔族にとって言葉は人を欺くための道具なわけですから、ゼーリエには通用しないでしょう。
それゆえの「会話が必要なのか?」という皮肉めいた問いということです。

 

【気になるポイント④】ユーベルとフリーレンの会話や話題

なんと、既刊13巻の作中でユーベルとフリーレンが直接会話するシーンは存在しません。
もし仮説が正しいなら、ユーベルはフリーレンに不用意に近づくことで正体が看破される等、何らかの不都合があることから警戒しているのかもしれません。
もしくは、不死なるベーゼとして敗北したことに対して未だに心の整理がついていないのかもしれません。

 

第二次試験の際、ユーベルがゼンゼの複製体と戦う直前のデンケンとの会話に気になるところがありました。
デンケンが状況を説明しようとして
「今、フリーレンが…」
と言いかけたところで、
「説明はいい、(ゼンゼの複製体を倒すことは試験を合格するために)必要なことなの?」
と、遮るように質問を被せたのです。

一見、ゼンゼの複製体を素早く処理するための発言とも取れますが、実際にはこの後、自分の魔法の特性を実演を交えて説明しており、急いでいる様子はありません。
このことから、デンケンの説明を拒否した理由が、フリーレンの話をすることを避けるためだったように見えました。
この場で話をすることまで避ける理由は分かりませんが、ユーベル=不死なるベーゼであるなら、彼女にとって間違いなく最も因縁のある相手はフリーレンです。

 

第一次試験でフェルンと同じチームになった際も、フリーレンの話は深堀りしませんでした。
クラフトに対しては、

「あれ、もしかしてエルフ?珍しーね。初めて見た」

と興味を示したユーベルが、フェルンとの会話でフリーレンに言及した際は、

「そういえばあのエルフ、あんたの師匠だっけ」
「あいつのせいでびしょ濡れになっちゃったからさ。ちゃんと叱っといてよね」

と、あくまで師弟関係のフェルンや、びしょ濡れになった自分にフォーカスを当てた内容となっています。
普段、他者を注意深く観察し、「ふーん」「そうなんだぁ」といった具合に露骨に興味を示すユーベルが、
物珍しいであろうエルフに興味を示すことも、直接会話をすることも、間接的にフェルンから話を聞くこともしないのは、既に知っている相手だからか、はたまた、話題にも出したくない相手だからでしょうか。

 

【気になるポイント⑤】ユーベルのモノローグ

原作6巻、第二次試験の際、迷宮の中でラントとユーベルがユーベル複製体と戦うシーンは彼女の視点で描かれており、内面(心の中)が語られています。
このシーンでユーベルは「昔から運が悪い」とモノローグで語りました。
また、複製体に対して「まったくこの死にたがりはしょうがないね」と話しかけています。

この「昔から運が悪い」はいつかユーベルの過去が語られる際にエピソードが明かされるのだと思いますが、今のところ理由(何があったのか)は分かりません。
仮説に当てはめるなら、不死なるベーゼの受肉先にされてしまった運命に対してと取ることはできます。

「死にたがり」については、今回立てた仮説に当てはめるなら、不死のキャラクターが最終的に求めるものが「死」そのものになることは想像できます。

こうなると、その直前でラントと交わしたこの会話も意味深です。

「ユーベル。君ってさ、戦いの最中でも饒舌なタイプでしょ。…黙ったら死んじゃうような
「よく観察してるねー。そうだね。死んじゃうかも

不死でありながら死を望む者による会話と考えるなら、なんとも皮肉なことです。

 

また、原作6巻のP124からユーベルの過去回想シーンがあります。
2年前の二級魔法使い選抜試験で一級魔法使いのブルグを殺した場面の回想でした。

この回想の中で、過去に姉が裁縫する様子を見ていたシーンが描かれています。
これはここまでで述べた前提を覆しかねない内容です!
ユーベルが不死なるベーゼであるなら、姉との思い出が回想されるのはどういうことなのか……。
もしかしたら、こんな状況もあり得るかもしれません。

ヒンメルに倒され肉体としての死を迎えたベーゼの魂は、
復活を遂げるためにユーベルの内側に入り込んだ。

しかし、身体の主であるユーベルの魂/意思に敗北……。
ユーベルは彼女の人格を維持したまま、
不死なるベーゼの記憶や能力(不死の特性を含む)を獲得した。

 

【気になるポイント⑥】不死なるベーゼの唯一のセリフ

「…何故…」

ヒンメルに倒される瞬間のこのセリフが、不死なるベーゼの作中唯一のセリフです。
この「…何故…」は何のことを言っているのでしょうか。

普通に考えるなら「結界魔法を破られたこと」に対してですよね。
このまま時間を使えば衰弱死させられると思っていたら結界魔法が破られてしまい、逆に倒されてしまった。
それに対しての「…何故…」です。

しかし、今回の説に合わせる形であえて曲解してみるとどうでしょうか。
例えば未来を見通す全知のシュラハトから事前にこのように伝えられていたとしたら?

「じきにヒンメル一行が君のもとに現れる。
 ……そして、彼らは君の結界魔法によって倒される」

もしこのように伝えられていたのなら、不死なるベーゼはヒンメルに倒されたあの瞬間にこう思ったことでしょう。

(結界魔法が破られ、私がヒンメルに倒されるということは……)
(全知のシュラハトはこの未来を知りながら私に嘘をついたのか……)

「…何故…」

そして、もしユーベル=不死なるベーゼなら、ユーベルも不死なるベーゼの側、すなわち魔族側のポジションを取るはずです。
しかし現状、一応は人間側のポジションを取っているように見えます。(山賊は殺すものの村を滅ぼしたりしない、律儀に大陸魔法協会の試験を受ける 等)
魔族に対して因縁の過去があるなら、ユーベルが過去に魔族であったとしても、人間側のポジションを取ることの辻褄は合います。

 

【気になるポイント⑦】未だに謎が残るユーベルの〝姉〟について

ユーベルには姉がいることが明らかになっており、表情は見えないものの、一部が描写されています。
ユーベルは幼少期に姉と暮らしていたようですが、その姉の行方についてはわかっていません。
しかし、物語の大きな歯車になりうるような含みを感じる描写・言及がなされています。(単なるサブエピソードに終止するようには見えない)

もしかしたら、不死なるベーゼだったのはユーベルではなく、彼女の姉なのかもしれません。
もしくは、「肉体を移ろう不死の存在」であるのなら、不死なるベーゼはユーベルであり、ユーベルの姉でもあるのかもしれません。

例えばユーベルの姉の肉体でフリーレンと戦い、一度はフリーレンに勝利するも、二度目に敗北。その後、ユーベルの身体に乗り移ったという流れも考えられます。
これならフリーレンがこれまで自分が負けた相手について語った直後にユーベルの初登場シーンがある件についても、大きな伏線だったことになりますね。

 

あとがき

この説はどこまで行っても
「不死を謳ったキャラクターと同じ意味の名を持つキャラクターがいて、なんかそいつが魔族っぽい」
というところを起点に様々なこじつけをしているだけの戯言にすぎません。

ですので、自分としてはこの仮説が合っているかどうかよりも、実際の原作がどのように展開していくのか、そして、ユーベルとは何者なのかの謎が知りたい!という思いでいます。

これからも楽しみに物語を追っていきたいと思います!

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