【葬送のフリーレン】ユーベル=不死なるベーゼ 説【考察】
なんだこの説は……たまげたなあ。
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【考察①】二人の名前の由来
『ベーゼ(böse)』と『ユーベル(übel)』が、どちらもドイツ語で『邪悪』を意味する言葉でした。
このことから、何かつながりがないか探り始めました。
邪悪(じゃあく)のドイツ語
ベーゼ
böse
ユーベル
Übel
なお、フランス語で『Baiser:口づけ』もベーゼと読むようです。
英語版の漫画で不死なるベーゼがどのスペルで登場しているか調べたところ、やはり口づけの意味の『Baiser』ではなく、邪悪の意味の『böse』でした。
【考察②】不死なるベーゼの二つ名
不死なるベーゼは七崩賢の一人でしたが、物語の開始時点で既にヒンメルたちによって討伐されています。
しかし二つ名が『不死なる』なのです。
強力な結界魔法が使えることが不死(ダメージが通らないという意味)の二つ名を与えたとも考えられますが、「不死」の二つ名を冠しながら「死んだ」とされているキャラクターは、メタ的に見れば生きていると思えてきます。
このことから、今も生き長らえている線を追ってみようと思いました。
【考察③】二人が扱う魔法について
『不死なるベーゼ』が扱うのは、人類には壊せないと言われていた結界魔法でした。
結局フリーレンに破壊されましたが、恐らく、それまでの間は誰にも破壊されないでいたのだと思います。
一方、『ユーベル』が扱うのは、『大体なんでも切る魔法<レイルザイデン>』です。
この二つの魔法、よく考えてみたところ対極にある魔法ではないかと思いました。
大体なんでも切る魔法と人類には壊せない結界魔法、これは『矛盾』の故事に登場する矛と盾を暗示させるかのようで、因果を感じます。
また、既刊13巻の中でユーベルが防御魔法を使うシーンは一度もありません。
魔法使い相手の戦いにおいては以下の戦闘スタイルをとっています。
・魔法を回避する
・ソルガニールで拘束する
・懐に飛び込んで「攻撃は最大の防御」的な戦い方をする
「防御魔法を展開して攻撃を防ぐ」ことは一度もしていないのです。
たまたま戦闘スタイルがそうだというだけなのか、何か使えない「理由」があったのか。
使えない理由があったとして、それが何なのかを追ってみます。
一級魔法使い選抜試験の第一次試験のカンネ&ラヴィーネvsリヒターの戦闘の際に、
「防御魔法はオーバースペックだと発動が遅れる」
と、リヒターが語っています。
これをユーベルに当てはめるなら、このような仮説が見えてこないでしょうか。
ユーベルはベーゼ由来の強力な結界魔法を使えるが
それとトレードオフで小出しにできる防御魔法が使えない
(レベルが上がってホイミがベホマに上書きされてしまい使えない……ちょっとだけ回復できればいいのにMPがたくさん必要……みたいな不便が起きている?)それ故に、強力なれど展開に時間がかかる結界魔法には頼らないような戦い方を選んでいる
これはユーベルがラントに共感することで分身魔法を会得しようとしていることの動機にもなると思います。
分身を作れるようになれば、結界魔法に頼らない戦術の幅がソルガニールを得た今以上に広がります。
【考察④】なんか魔族っぽい
言動が魔族っぽい。
これはたまたまではなく、意図的にそう描かれているのだと思います。(ユーベルがベーゼかどうかは別として)
人を殺して何とも思ってない様子が見てとれたり、マハトやソリテールのように人間の行動や思考に興味を持つシーンがあったりします。
もっとも、興味を持ち共感できれば魔法を会得できるのでそうしているだけかもしれません。
第一次試験の際、早々にシュティレを捕獲し、「試験終了まで潜伏してやり過ごそう」と提案したラントに対して、ユーベルはこう答えました。
「えー、つまんないよ。魔法使いなら堂々と戦わないと」
これは作中で何度も描かれ、説明されている魔族によくある考え方そのものと言えます。
フランメとフリーレンの前に複数人で現れるもクソみたいな驕りと油断で死んだ魔族たちや、
魔力を制御するフェルンとフリーレンを「魔法使いの風上にも置けない」と評したリュグナーも同様の思想を持っていました。
【仮説】ユーベルはベーゼなのではないか ~肉体を移ろい復活する魔法~
ここからは仮説です。
荒唐無稽な話をします。
少女はあるとき不死なるベーゼに攫われ、それ以来、囚われていました。
ベーゼが彼女を攫った理由は、自身の肉体が死を迎え滅びた時、受肉先があれば復活できる魔法を掛けており(不死なるの二つ名の通り)、それ用の人間が必要だったからでした。
不死なるベーゼの結界魔法は強力ですが、
断頭台のアウラの服従させる魔法<アゼリューゼ>や、
黄金郷のマハトの万物を黄金に変える魔法<ディーアゴルゼ>のような特別な名前がついていません。
つまり、ヒンメル一行を閉じ込めた強力な結界魔法ではなく、
この〝肉体を移ろい復活する魔法(仮)〟こそが不死なるベーゼが生涯をかけて研鑽した魔法だったのです。
ヒンメル一行に敗れたベーゼの肉体は死を迎え、滅びました。そして、予定通り少女の肉体を使い復活を果たします。
人間の身体を得た今、七崩賢たる魔族の名前『ベーゼ』を名乗るわけにはいかないので、『ユーベル』を名乗り、人間としての人生を歩むことにしたのでした。
ユーベルは人間を殺すことを何とも思っていないフシがあり、山賊を殺したり、試験官の一級魔法使いブルグを殺したあと平然とした様子を見せたりしています。
これは彼女が元魔族であるなら納得できる行動です。
一方で、殺しに猶予が欲しいと語ったヴィアベルには共感を示し、『見た者を拘束する魔法<ソルガニール>』を会得しました。
これは、ユーベルが魔族ではなく人間として生きていくにあたり、人間の心や考え方を理解したいという思いが芽生えたことから、ヴィアベルの考えに共感しようと試みた結果かもしれません。
そして、魔族ベーゼから人間ユーベルとなった彼女は、同じく人間に興味を持つも最後まで人間に共感することが出来なかったマハトやソリテールと異なり、真に共感することができ、ソルガニールを会得できたのかもしれません。
また、ユーベルの扱う『大体なんでも切る魔法<レイルザイデン>』は切れるイメージを持てるものは切れ、切れるイメージを持てないものは切れないという感覚的な魔法ですが、この魔法では防御魔法が切れないのです。
自らがベーゼだった頃、鉄壁の防御に自信があった結界魔法。それに類する防御魔法であるからこそ、今ユーベルとなった彼女には、それが切れるというイメージが持てないのかもしれません。
Q.E.D. アウラ、自害しろ
【気になるポイント①】原作7巻のコマについて
原作マンガ『葬送のフリーレン 7巻』より、左からP32の上部コマとP34上部コマを抜粋
P32の上部コマ P34の上部コマ (C) 原作: 山田鐘人・アベツカサ/ 小学館
どちらもヴィアベルの回想シーンですが、ユーベルが描かれたページから1ページめくった同じ場所に、不死なるベーゼが描かれています。(少しずれてるけど)
ペラペラめくると同じ場所にいるユーベルとベーゼが交互に表示されます。
これは偶然なのでしょうか、または示唆なのでしょうか……!?
【気になるポイント②】ユーベル初登場シーン直前のフリーレンの会話
原作マンガ4巻のP174にて、フリーレンが過去に負けた戦いの話をしています。
4人の魔族、1人のエルフ、そして6人の人間に負けたと語っています。
ユーベルの初登場シーンはそのコマの直後です。
フリーレンが6人の人間に負けたことを語った直後にユーベルが初登場
(C) 原作: 山田鐘人・アベツカサ/ 小学館
フリーレンが過去の敗戦を語った直後に登場したのは何か意図があるのではないかと、これまでの仮説をこじつけてきた身としては思ってしまいます。
そしてここで一つ思ったのが、
ベーゼからユーベルへの受肉(復活)は直接行われたのではなく
ベーゼとユーベルの間に何人かの存在(人間・エルフ・魔族?)を挟み
その肉体の死を迎えるたびに、新たな肉体へと移行し復活を遂げた
そして紆余曲折あり、今現在はユーベルになっている
のではないか、ということです。
そして、現在のユーベルの前身が、フリーレンを負かした人物のうちの1人であることから、伏線としてユーベル初登場タイミングを意図的にフリーレンが敗戦を語った直後のコマにしたのではないかと思いました。
このパターンであれば、ベーゼの死から少なく見積もっても30年以上経過しているのにユーベルの見た目が若いことの説明もつくかと思います。
【気になるポイント③】ゼーリエとの会話
もしユーベル=ベーゼなら、ゼーリエがユーベルを一級魔法使いとして合格とした理由が気になります。
さらに合格を言い渡す際の会話も意味深に見えてきます。
一目姿を見ただけで合格を言い渡したゼーリエに対してユーベルは
「まだ何も話していないけど」
と言います。
これに対しゼーリエは
「会話が必要なのか?」
と返します。
このシーン、もし仮説が合っているのなら、
「(本来魔族であるお前との間に)会話が必要なのか?」
という皮肉を込めた意味で言ったようにも捉えることができるのではないでしょうか。
【気になるポイント④】ユーベルとフリーレンの会話や話題
なんと、既刊13巻の作中でユーベルとフリーレンが直接会話するシーンは存在しないのです。
一体なぜでしょうか。
もし仮説が正しいなら、ユーベルはフリーレンに不用意に近づくことで正体が看破される等、何らかの不都合があることから警戒しているのかもしれません。
また、第二次試験の際、ユーベルがゼンゼの複製体と戦う直前のデンケンとの会話にも気になるところがありました。
デンケンが状況を説明しようとして
「今、フリーレンが…」
と言いかけたところで、
「説明はいい、(ゼンゼの複製体を倒すことは試験を合格するために)必要なことなの?」
と、遮るように質問を被せたのです。
一見、ゼンゼの複製体を素早く処理するための合理的な発言とも取れますが、実際にはこの後、自分の魔法の特性を実演を交えて説明しており、急いでいる様子はありません。
このことから、デンケンの説明を拒否した理由が、フリーレンの話をすることを避けるためだったように見えました。
話をすることまで避ける理由は分かりませんが、ユーベル=ベーゼであるなら、間違いなく最も因縁のある相手です。
第一次試験でフェルンと同じチームになった際も、フリーレンの話は深堀りしませんでした。
クラフトに対しては
「あれ、もしかしてエルフ?珍しーね。初めて見た」
と興味を示したユーベルが、フェルンとの会話でフリーレンに言及した際は
「そういえばあのエルフ、あんたの師匠だっけ」
「あいつのせいでびしょ濡れになっちゃったからさ。ちゃんと叱っといてよね」
と、あくまで師弟関係のフェルンや、びしょ濡れになった自分にフォーカスを当てた内容であり、フリーレンへの興味が感じられません。
普段、他者を注意深く観察し、「ふーん」「そうなんだぁ」といった具合に露骨に興味を示すユーベルが、物珍しいであろうエルフに興味を示すことも、直接会話をすることも、間接的にフェルンから話を聞くこともしないのは、既に知っている相手だからかもしれません。
【気になるポイント⑤】ユーベルのモノローグ
原作マンガ6巻、第二次試験の際、迷宮の中でラントとユーベルがユーベル複製体と戦うシーンは彼女の主観となっており、内面(心の中)が語られています。
このシーンでユーベルは「昔から運が悪い」とモノローグで語りました。
また、複製体に対して「まったくこの死にたがりはしょうがないね」と話しかけています。
この「昔から運が悪い」はいつかユーベルの過去が語られる際にエピソードが明かされるのだと思いますが、今のところ理由(何があったのか)は分かりません。
「死にたがり」については、今回立てた仮説に当てはめるなら、不死の人物が最終的に求めるものが「死」そのものになることは想像できます。
こうなると、その直前でラントと交わしたこの会話も意味深です。
「ユーベル。君ってさ、戦いの最中でも饒舌なタイプでしょ。…黙ったら死んじゃうような」
「よく観察してるねー。そうだね。死んじゃうかも」
不死であり、死を望む者による会話と考えるなら、なんとも皮肉なことです。
また、6巻のP124からユーベルの過去回想シーンがあります。
2年前の二級魔法使い選抜試験で一級魔法使いのブルグを殺した場面の回想でした。
この場面でユーベルが過去に姉が裁縫する様子を見ていたシーンが描かれています。
これはここまでで述べた前提を覆しかねない内容です!
ユーベルが不死なるベーゼであるなら、姉との思い出が回想されるのは何故なのか。
ベーゼは体の持ち主の記憶を引き継ぐのか……。
もしかしたら、こんな状況もあり得るかもしれません。
肉体としての死を迎えたベーゼは
復活を遂げるためにユーベルの身体に入り込んだしかし、身体の持ち主であるユーベルの意識に敗北または抑え込まれ
ユーベルは彼女の人格のままベーゼの記憶や力(不死の特性を含む)を獲得した
【気になるポイント⑥】不死なるベーゼの唯一のセリフ
「…何故…」
ヒンメルに倒される瞬間のこのセリフが、不死なるベーゼの作中唯一のセリフです。
この「…何故…」が何にかかっているのかも考察のし甲斐があると思います。
シンプルに考えるなら「結界魔法を破られたこと」に対してですよね。
このまま時間を使えば衰弱死させられると思っていたら結界魔法が破られてしまい、逆に倒されてしまった、それに対しての「…何故…」です。
今回の説に合わせる形であえて穿った見方をしてみるとどうでしょうか。
例えば未来を見通す全知のシュラハトからこのように伝えられていたとしたら?
「ヒンメル一行はお前のもとに現れる。そして、お前の結界魔法によって倒される」
もし事前にこのように伝えられていたのなら、ベーゼはヒンメルに倒されたあの瞬間にこう思ったことでしょう。
(結界魔法が破られ、私がヒンメルに倒されるということは……)
(全知のシュラハトはこうなることが分かっていて私に嘘をついたのか……)「…何故…」
そして、もしユーベル=ベーゼなら、ユーベルもベーゼの側、すなわち魔族側のポジションを取るはずです。
しかし現状、一応は人間側のポジションを取っているように見えます。(山賊は殺すものの村を滅ぼしたりしない、律儀に大陸魔法協会の試験を受ける 等)
魔族側に因縁の過去があるなら、ユーベルが過去に魔族であったとしても、人間側のポジションを取ることの辻褄は合います。
あとがき
この説はどこまで行っても
「不死を謳ったキャラクターと同じ意味の名を持つキャラクターがいる」
というところを起点に様々なこじつけをしているだけの戯言にすぎません。
ですので、自分としてはこの仮説が合っているかどうかよりも、実際の原作がどのように展開していくのか、そして、ユーベルとは何者なのかの謎が知りたい!という思いでいます。
これからも楽しみに物語を追っていきたいと思います!
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